2019年 03月13日 14時48分 配信

健全な部活動のモデルをつくる

健全化 ハンドボール

筑波大学アスレッチックデパートメントに参画した最初の運動部に

 2017年12月5日。男子ハンドボール部は筑波大学アスレチックデパートメントに参画することを正式に合意した。同時に、女子ハンドボール部、硬式野球部もこれに合意し、筑波大学にて調印式が開かれた。ここから、日本でも殆ど前例の無いアスレチックデパートメント(AD)の取り組みが始まった。

 男子ハンドボール部がADに入ったきっかけは、部に大きな問題があったからではない。男子ハンドボール部の藤本元監督は言う。「1つのチームでやれることの限界を感じていた。大学スポーツのあり方を考えた時、ADに入ることが重要な機会だと感じた」。より価値のある大学スポーツのあるべき姿を求め、ADへの加入を決めた。

男子ハンドボール部とADが掲げるミッション

 男子ハンドボール部とADのミッションは一致していた。部はハンドボールの普及、発信、研究を使命としてきた。それは、ADが掲げるミッションの一つ「学校スポーツの価値の最大化」と一致した。男子ハンドボール部はこれまで、ハンドボール教室を催して県内の小学生に教えるなどハンドボールの普及も積極的に行なってきた。

ただ、活動にはリスクと限界があった。ハンドボール教室で小学生がケガをしてしまった場合の責任の所在は不明確で、広報においてもリスクマネジメントができておらず、学生だけでは慎重にならざるを得ない。会計でも学生が自宅で多額のお金を管理する危険性も無視できなかった。つまり「予防すべき課題」は多々存在していた。

アスレッチックデパートメントとの取り組みを始動

 ADはまず、学生の安全、安心の確保に取り組んだ。5月に筑波大で初めて部活横断のアスレチックトレーナーを雇用。アスレッチックトレーナーは指導者と連携し、学生のケガなどの救急処置だけでなく、健康管理や外傷・障害予防、コンディショニングなどにあたる。「毎日見てもらうことで、学生たちのケガの予防につながっていることが何よりもありがたい」。(藤本監督)

試合中、選手同士の衝突で脳震とうを起こした選手にアスレッチックトレーナーが素早く対応したことがあった。チームに帯同することで、学生たちが身体の不具合を普段から気軽に相談できるようになったことも大きい。

 さらに、練習環境も整備した。筑波大のハンドボール部は体育館の確保ができず、基本的に屋外で練習を行ってきた。夏は日差しが照りつけ暑いだけでなく、秋頃から夜の練習は照明の光りが眩しく、とてもいい環境とは呼べなかった。そこでアスレッチックデパートメントは2019茨城国体でハンドボール会場となる「坂東市」と連携を開始。2週間に一回程度、来年の国体でも使用される坂東市総合体育館で練習する機会を確保した。藤本監督は「練習の効率が格段に上がり、夏場でもしっかりトレーニングを積むことができた」と語った。

日本に前例の無い会計統合

ハンドボール部とアスレチックデパートメントはさらなる改革を実施。これまで任意団体として大学とは別に独自で管理されていた部の会計を「大学会計」へと統合した。部費等はすべて大学に収め、部の支出は大学が処理する。

つまりこの瞬間、ハンドボール部は従来の「課外活動」では無くなり、大学の帳簿に登場する「正式なプログラム」となった。大学内の意識改革と同時に会計の不透明化や会計を管理する学生の不安も取り除かれた。

AD1年目で3季ぶりに秋季リーグを制覇

 筑波大学のADは強化を目的としない。学校スポーツの「健全化」と「価値の最大化」が目的である。しかし、ADとの連携による成果は試合にも明確に現れた。9月から行われた関東大学秋季リーグ戦で筑波大は7勝2敗で3季ぶりの優勝。ADに加入してからわずか1年での快挙だった。

藤本監督は「これまで毎年のリーグ戦終了時は満身創痍だった。だが、ADと共にトレーナー整備や練習環境の改善を行ったことで大会を通してけが人が出なかった。リーグが終了した翌週でも試合をやれる程のコンディションなんです。これは間違えなくアスレチックデパートメントとの連動による成果です。」とこれまでになかった新たな手応えを口にした。

2018年11月の全国選手権(インカレ)では惜しくも宿敵早稲田大にベスト8で敗戦。4年生最後のシーズンを優勝で飾ることはできなかったが、激戦の大学ハンドボール界において、筑波大学の勢いは増している。

「学校スポーツのあるべき姿を定義する。」

筑波大学ハンドボール部とアスレチックデパートメントの改革はまだ始まったばかりだ。

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